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インフルエンザ脳症が起こる原因とは

薬を飲む女性

インフルエンザ脳症という言葉をきいたことはあるでしょうか。
インフルエンザ感染症の症状と言えば高熱や倦怠感、関節痛などが特徴的ですが、小児や思春期までの若年層患者を中心に脳症を引き起こすリスクがあるのです。
では、インフルエンザ脳症とはどのようなものなのでしょうか。

通常、インフルエンザウイルスは気道の上皮細胞に感染することによってその数を圧倒的に増やし、上気道症状などを表します。
しかし、筋肉痛などはインフルエンザウイルスそのものの作用ではなく、ウイルスを感知した体が発するサイトカインと言う分子が原因であると言われています。
サイトカインは体にとって危険信号の役割を果たすタンパク性のホルモン様物質を纏めた総称的な呼び名です。
このサイトカインが高値となるとマクロファージや好中球などの炎症に関わる種々の免疫細胞が危険を察知して活性化します。
このとき、炎症を引き起こして体を守ろう、外来抗原を倒そう、という体の免疫システムが活性化していますので、非常に炎症やそれに引き続く反応が起きやすい状態となっています。

この高サイトカイン血症が持続すると稀に脳にウイルスなどの抗原は見当たらないままに炎症のような反応が起こり、中枢神経症状が現れることがある、と言われています。
これがインフルエンザ脳症です。
脳症、とは中枢神経障害が見られ浮腫という炎症に引き続いて起こる反応が見られるものの、炎症そのものは起こっていない、という非常に特殊な状態です。

インフルエンザ脳症のリスクは年齢によるものだけではありません。
インフルエンザ感染の初期、発熱だけが著明になり検査してもウイルスが検出できないときにただの風邪と勘違いして解熱剤を服用した患者さんにはインフルエンザ脳症の症状が強く表れると言われています。
NSAIDsという特定の解熱剤が増悪因子になっている、というのは体系的に明らかですが、その実、インフルエンザ脳症は未だに発症機序も含め判明していない点も多いのです。

インフルエンザ脳症になりやすい人種とは?日本人は?

インフルエンザ脳症の発症メカニズムについてはサイトカインが原因であると疑われてはいますが、判明していない点が多いのは前述のとおりです。
しかし、日本人であればこのインフルエンザ脳症は決して看過してはいけない疾患だといえます。
なぜなら、欧米ではインフルエンザ感染に引き続いて脳症を引き起こすケースは単発的に紹介される程度ですが、日本人にはインフルエンザ流行に伴って毎年数例報告されるためです。

特にインフルエンザ脳症は中枢神経症状に留まらず、脳幹の生命維持に関わる領域が障害されることによって呼吸不全やショック症状を示し、15%が死に至る可能性がある恐ろしい疾患であることも忘れてはいけません。
これは地域差に基づいてはじき出された疫学的データです。
これは人種による違いが原因で発症率に差が表れている、という話もあります。
遺伝的な要因によって、高サイトカイン血症からインフルエンザ脳症に発展しやすい、という特徴があるのはアジア、特に高頻度に認められるのは日本を含め東アジアの諸国である、というデータも得られています。

人種、つまり遺伝子の違いがインフルエンザ感染症の重症化についてコントロールしている可能性が指摘されていますが、その具体的な差異については未だに明らかにされていません。
その一方で、日本は解熱剤が簡単に手に入るために発熱に対して応急処置的に服用するケースが多く、そのために発症率および重症化率が高まってしまうことが原因である、ということも言われています。
その真贋はともかく、発熱に際して安直に解熱剤を使用することはこうした疾患のリスクを高めますので、自己判断での服用は出来るだけ控えたほうがいいでしょう。